8.「勇者」はいるか?

 どんな時代でも人間、どう生きるかが問題だ。自分の信じる生き方を一生通せればいいが、現実にはそうはいかない。なにしろ人間、一人で生きる訳にはいかず「この世の中」で生きている。「この世の中」の認識が人により違う、民族により違う、国家により違う、宗教により違う・・・そして多分100年後の人達は現代人とはかなり違った認識を持つはずだ。  
 この世の中で生きている限り、あまり自分の理想に走り過ぎない方がよい。  
 他人は自分とは違うし、自分も含めて人間みな利己的でわがままだ。たとえそれがささやかな正義感や人類社会に対する義侠心からであったとしても、自分の理想を理解してもらうのはなかなか難しいし、疲れる。理解を得ても人間また嫉妬深いし欲深い。メンツやリ-ダ-シップをめぐって何時も内輪もめしている。理想を主張するにはそれなりに体力・パワ-が必要だ。  
 これまでに、小さな理想ではあるが私も少しは追って生きてはみた。だがナミのサラリ-マンではすぐにパワ-が切れてしまう。そこで理想と現実の間を行ったり来たり、時にはネをあげる。  
  
 「勇者」に期待される大きな理想にはそれなりのパワ-が必要だ。時には「勇者」も疲れるだろう。だからたくさんの「勇者」が集まればいい。「賢
者」も「遊び人」も「僧侶」も「商人」も「戦士」もたくさん集まればいい。  
 皆、それなりにパワ-が必要だ。そんな力が集まらないと、この巨大なマモノの退治はできない。なにしろ敵は我々自身であるかも知れないのだから・・・・。マモノは日々指数函数的に大きくなってゆく。その成長速度に追いつけず時間切れにならないうちに、勇者達が集まればよいがと思う。  
  
 間に合わなければ、残されたスト-リ-に従うだけだ。つまりまた、人類伝統のお家芸、徹底的な破壊ゴッコを繰り返すのだ。何度でも好きなだけ、繰り返すのも人類の勝手だ。全ての破壊の後に、毎度お馴染みの「人類愛」と共存の精神が再び三たび芽生える事になる。だが今度のゲ-ムはすさまじいゾ!人口増加の規模も科学技術の進歩も指数的だ。もしもこの辺りの宇宙・時間と空間の見守り役の神サマがいたらきっと今、人類にこう申し伝えるだろう。  
 「オマエ等、好きなだけ勝手にヤレ!だが地球表面も環境も、人間が使える領分だけはケジメをつけてわきまえろ!ったく、こいつ等ときたら、性懲りもなく戦争はするし、はびこるし、美しかった地球を汚すワ、食い荒すワ、全く手に負えない連中だ!オマエ達の仲間うちだけで勝手にやり合うのは自由だが、地球系の存続を損うような事があれば許してはおけぬ。本当に、オマエ達ヒト科の動物だけでなく全てをダメにしかねない。」  
  
 神サマが気まぐれにお始めになった進化の偶然性が、地球系に対してあまり美しい進化とは思えない、宇宙の癌細胞のような動物が出現する事になろうとは、神サマだって想像できなかったに違いない。そんな神サマの気持ちで、マモノ退治に出掛ける「勇者」とその仲間達が現れるのを待っている。  
 その人達の活動がきっと神サマそのものの一部である筈だ。なぜならば、今後も100年、500年、2000年と続く筈の人類と地球系をマモノから
守ってゆくのだから。  
 今、知恵と勇気と正義感のある人々は集まらなければならない。勿論、あなたも・・・・・・・。