会長挨拶

  

 「ストック型社会」という言葉がようやく国内で市民権を得始めてきました。未だ国民全体の共通認識には至ってはいませんが、多岐にわたる幅広い分野の人々の確たる理解と共感を得ています。

 これまで複数の中央省庁や地方自治体、あるいは業界や各種民間団体等との協業を続けてきましたが、最近では国の政策提言にも上がり、新聞・雑誌等メディアの話題にも取り上げられるようになりました。この考え方の骨子は次の世代の生活を豊かにし、経済構造を健全化し、加えて地球環境の保全と資源的自立を目指したものです。

 概ね10年前から始まったECO-ECO(Economy as Ecology)理論の、一つの結論として得られた「ストック型社会論」も、各専門分野からの理論形成が一通り成立したように思われます。

 今はそれを具体的なかたちで示す、つまり次世代に向けた新しい国土形成、地方自治体レベルのストック型地域形成がスタートする前夜に在るような印象を持ちます。

 日本のストック型社会転換が円滑に進むための一助になればと思います。  
  

研究会概要

 

団体名称 次世代システム研究会
英語表記 Frontier of Socio-Science Studies
代表者 岡本 久人
設立年月日 2001年4月7日
事務局所在地 〒805-8512

北九州市八幡東区平野一丁目6-1 九州国際大学経済学部 宇都宮研究室

TEL 093-701-7690
FAX 093-701-7691

 

沿 革

  

 2011年の3.11の大震災の後に「ストック型社会」という考え方に再び注目が集まるようになった。(NHK明日の日本HP参照)これは2007年9月福田政権発足時および2009年(H11年)6月に超長期優良住宅普及促進法施行時に続き3度目のブームと言えるかもしれない。「ストック型社会」とは価値あるものを造って大切に長く使う社会である。  
  
エコエコ研究会から次世代システム研究会発足へ
 ストック型社会の考え方は、経済・環境・生活・等の社会科学の境界問題を自然科学の観点から統合的な解を求めるECO-ECO(Economy as Ecology)理論のひとつの結論として得られた。この考え方に関する活動は先ず、1997年に北九州青年会議所等を中心にした市民運動・エコエコ研究会から始まった。当時の通産省や環境省等の関係機関の支援も得て、定期研究会、各種小冊子・広報ビデオ等出版、シンポジウム・教育イベント等の開催を通しての幅広い世論形成活動が展開された。  
 エコエコ研究会の中から、ECO-ECOの考え方の理論的検証と具現化に向けた科学技術・社会技術的専門家による理論形成の必要性の声が高まり、2000年4月に、東京大学名誉教授平澤先生を会長にお迎えして、大学・行政・民間企業・研究機関等の専門家を中心にした次世代システム研究会が発足した。  
  
次世代システム研究所の設立。研究活動の全国的な展開へ
 さらに次世代システム研究会での各種研究活動の過程において、将来の政策展開に向けた研究拠点の必要性が求められ、2001年4月に九州国際大学に次世代システム研究所が設立された。この研究所を拠点にして、次世代システム研究会会員および多岐にわたる団体・機関との研究活動が展開され、ストック型社会システムに関する理論の形成が進められた。  
 とりわけ2002年10月の研究・技術計画学会の年次大会においては、ストック型社会に関する分野を一単位のセッションとして、次世代システム研究会会員を中心に20件の理論を発表でき、学際的な観点から高い評価を得た。また霞ヶ関の関係省庁の若手官僚を中心に次世代システム研究会東京部会、あるいは関西ほかの地域、企業や民間団体においてストック型社会に関する団体が形成されてきた。これら多岐にわたる研究活動の展開は、その後の政策形成に寄与したものと思われる。  
  
超長期優良住宅普及促進法立法・北九州市「環境モデル都市」選定への寄与  
 九州国際大学の次世代システム研究所は2007年9月に閉鎖され、現在はWeb上で展開しているが、次世代システム研究会の事務局は引き続き九州国際大学に拠点を置いている。  
 奇しくも2007年9月にストック型社会への転換を政策の一つに挙げた福田内閣が発足した。その政策の一環として200年住宅構想の立法が検討され、その検討委員(社会資本整備審議会/国交省)として当会副会長が参画し冒頭の超長期優良住宅普及促進法の立法に寄与した。また当時の洞爺湖サミットにあわせた「環境モデル都市」構想の形成においてストック型社会の理念を反映させるために内閣官房の委員として当会副会長が参画した。応募した多数の自治体の中から、「ストック型社会を目指す」を基本理念にした北九州市は選定された。次世代システム研究会は、北九州市の「環境モデル都市」構想の具現化に向け鋭意、協力してきた。  
  
「ストック型社会への転換」未来への継続  
 その後も国内外の多岐にわたる分野において出版、論文・研究報告、講演活動、まちづくり・地域づくり活動の支援、等々を展開している。とりわけ宮城県土木部とは震災前から大規模災害後の復旧をストック型社会を共同研究してきたこと、震災後に多数の会員が震災復興や福島復興に向けた支援活動を展開している。  
 「ストック型社会」という考え方は、世界人口が70億人を超え2050年には90億人を超えると予測される中で、少子高齢化・人口減少が急速に進む我国において、近未来の経済・環境・資源・生活・安全保障・等々の課題を統合的に解決する政策である。我国をとりまく今日の課題への対応という意味だけでなく、次世代の人々の夢や希望や可能性を保証するために「ストック型社会への転換」を目指したこの活動を、世代を超えて継続していきたい。